ルネのきままなアトリエ
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上:山頂直下の古道  下:奥駆道を彩るガクウツギ
奈良県吉野郡天川村:1439m

 2006年6月12日(月) 
晴れ
 夫と
コース 広域地図  ルート
10:47 五番関トンネル西口(駐車)
11:02 五番関
11:22〜11:32 休憩
12:02〜12::42 大天井ヶ岳山頂
13:30〜13:46 百丁茶屋跡(二蔵宿)
14:30〜14:40 休憩
15:20 五番関
15:30 五番関トンネル西口

五番関から大天井ヶ岳山頂を通り百丁茶屋跡への奥駈古道を歩き、山頂を巻く今の奥駈道を通り、五番関に戻ってきた。

ほの暗い山道に咲くガクウツギの白い花を愛でながら、1300年前から信仰深い修験者達が辿った歴史の道の一端を歩いた。



入梅したというのに雨はどこへやら。
スカッとした晴れではないけれど、毎日太陽が顔を覗かせている。
相方が休みをとれたので、行者還岳か大普賢岳辺りに行こうと思った。平日だし静かな山歩きが出来るだろう。
ところが、結局寝坊してしまい大天井ヶ岳を五番関からちょこちょこっと登ることにした。
家を出たのが既に9時。


今日は川上村の高原から五番関への林道を走る。
洞川からの距離に比べてこちらの方が遥かに長いのだけれど、橿原からだと結局同じぐらいの距離になる。(多分)それに、こちらからの登りが結構気に入っている。

高原の集落のはずれから、左に高原川を隔てて大所山(百合ヶ岳1346m)らしき山が見える。五番関から少し南の大峰の主稜線から北北東に向かって延びる大きな尾根上のピーク。
名前を知ったのはつい最近なのだけれど、いつか登ってみたいと思っている。

高原を過ぎ、見事な杉の林立する中、本谷に沿って緩やかに上っていく。
谷を見下ろすと、大きな岩の間を白い飛沫をあげて清冽な水が流れ落ちている。谷に枝を伸ばす木々の緑も瑞々しい。

道は谷から離れ、右の山腹を大きく絡みながら高度をどんどん上げていく。
大所山から大峰主稜線(奥駈道)へと連なるごつごつした尾根が真横に見える。
大天井滝を右に見ると、五番関トンネルはすぐ。

見事な杉林を登る 白い飛沫を上げ流れる 大所山から奥駆道への稜線


トンネルを抜け、西口の登山口に駐車。
休日ならここも登山者の車でいっぱいなんだろうけれど、今日は他に車はない。
登山の準備を整える間に、2台車が通り過ぎていったのみ。

東屋の後の登山口から山道に入る。
傍らのガクウツギが満開。
尖がった岩がゴロゴロの道をほぼ直登。20分弱の登りだけれど、汗びっしょりで五番関に辿り着いた。

五番関トンネル西口 ガクウツギ 距離は短いが・・・

五番関は木立に囲まれた広場。
右手に女人結界門。その前に3メートル近い錫杖のモニュメントが建っている。
御影石製の道標の上に修験者の頭襟(ときん)が載っていた。


この頭襟は山中を歩く際、岩や枝から頭を守る実用的な役目と同時に、悪霊から身を守る意味があるらしい。
太陽神である大日如来の冠をかたどったもので、生きるものは何度も生まれ変わるという「いのちの法則」の中で、人が避けることの出来ない因果関係をあらわす12のヒダがついている。
・・・とは、帰ってから調べたこと。持ち物一つにも深い意味合いがあるということに妙に感心したりする。


右が女人結界門 山上ガ岳まで4.3km
吉野山まで13.8km
錫杖

五番関からは、大天井ヶ岳のピークを巻いて百丁茶屋へ至る現在の奥駈道と、山頂を経由して百丁茶屋に行く大峰古道に分かれる。

今は、険しい山頂への道を避け巻き道をとるほうが多く、山頂経由の道は長い間廃れていたらしいが、近年復活したらしい。

巻き道を右に見送り、山頂への道を行く。
植林と自然林の混在する中、岩がゴロゴロの登りが続く。

ひとしきり登ると、左手に展望が開ける。
正面に山上ガ岳。右にレンゲ辻から白倉山への稜線。

岩がごろごろの登りが続いている
中央左:山上ヶ岳


滴り落ちる汗をぬぐい、しばし展望を楽しんだ後、またしても登る。
左手に植林帯、右手に自然林。痩せ気味の尾根などもあるが、概して歩きやすい道。

山頂近くになると、右手に大きなブナが林立する斜面が続く。
薄曇りだけれど、青々としたブナの林の木漏れ日が美しい。

ちょっとした痩せ尾根 右手にブナ林が続く

山頂のすぐ手前、道の真ん中に妙な木があった。
ごつごつしたコブのようなものが幹にびっしりと付いている。
中から何やら音が聞こえてくるのだけど・・・。何だろう・・・。
コブの木


無知を曝け出してはなはだお恥ずかしいのですが、調べると、どうやらこれが虫瘤(むしこぶ)とか虫?(ちゅうえい)とか呼ばれるものみたい。
多分・・。(間違いであればご指摘ください)

昆虫、ダニなどの寄生や産卵による刺激によって、植物の組織が異常に発育したものらしい。
形は球状、耳たぶ状などいろいろあるらしいけれど。


(これ以降ちょっと気をつけると、あちこちでよく見かけます)



山頂のすぐ手前に百丁茶屋への道が右に分かれる。
30メートル先が山頂だった。
五番関から休憩を入れて丁度一時間。

五番関 2.0km
洞辻(浄心門) 4.4km
山上ヶ岳 6.2km
大天井ヶ岳山頂(1439m)


山頂は北から西に展望があるだけで、木立に囲まれた広場だった。
サラサドウダンの木が数本生えている。
薄紅色の釣鐘状の可愛らしい花が咲いている。

それにしても、昨年、釈迦ガ岳の山頂で見たサラサドウダンはすごかった。
その見事な花とつい比べてしまう自分に気付き、花に申し訳ない気持ちになったりする。(2005年6月25日 釈迦ガ岳記録)

山頂のサラサドウダン

すっきり晴れていれば、金剛・葛城山脈から音羽山塊、遠くは奈良盆地まで見渡せるらしいけれど、今日は金剛山もぼんやり霞んで、それとはっきり分からない。



山頂にて


今日は五番関からちょこちょこっとピストン、の予定で登ってきた。
けれど、これで往路を引き返すには余りにもあっけない気がする。
相方に百丁茶屋を回って五番関に戻ることを提案。
百丁茶屋への道を下る。

山頂から30メートル引き返す手間を惜しんで、荷物運搬用のレールに沿って下りる。すぐに急斜面を落ちるように下る。(相方は引き返し、正規のルートを下りてきた。この辺にも性格の違いが表れている)

正規のルートにしても山頂直下のこの道、かなり険しい。下りだからいいけれども・・・。

山頂直下の険しい道 レールに沿って下る

モノレールに沿って、どんどん下る。
しばらくして、広場に出る。
吉野山から連なる稜線に林道が走っているのが見える。正面は青根ヶ峰か。
広場には小さな社が祀ってある。振り返れば、大天井ヶ岳が聳えている。

小祠のある肩の広場 満開のトチノキの向こうに青根ヶ峰


吉野まではかなりの道のりだ。
大峰奥駈修行では、1日で吉野から山上ガ岳まで歩くというのだから、すごいものがある。距離にして20キロ。


同じ職場に、何度も奥駈修行に参加されている方がいる。7月半ば、梅雨の末期の大雨の時期。その方は結構高齢の方なのだけれど、日々体を鍛えて、奥駆修行の数ヶ月前から本格的なトレーニングをされている。

修行には日本全国から参加者が集まってこられるらしい。親子での参加や、女性の参加もあるらしい。
(勿論、山上ガ岳周辺は歩けないけれど)
役の行者は険しい山道を歩き峻険な行場で行をし、心身ともに極限状態まで自分を追いやる中で悟りを開かれたらしいけれど、現在の修行者は何を思いこの道を辿るのだろうか。



下ること50分ほどで、木立の合間に百丁茶屋跡の二蔵宿の屋根が見えてきた。

緩やかな杉林の中も行く 百丁茶屋跡近くの自然林 百丁茶屋跡の二蔵宿


二蔵宿の前は広場になって、ベンチと小祠がある。
小屋の中を覗いてみる。真ん中にストーブを備え付けた室内は、塵一つなく片付けられている。
吉野古道の維持管理活動のために造られたらしいが、避難小屋として一般にも開放されていると書かれていた。
小屋の後ろには簡易トイレも設置されていた。8分ほど行けば水場もある様子。


百丁茶屋跡の二蔵宿 清潔な室内

小休止の後、五番関への道を行く。
自然林はすぐに植林帯の道に変わる。

大天井ヶ岳をトラバースするこの道、山の斜面の急なところでは自然林、ちょっと緩やかなところはしっかりと植林されている。
それも、かなり手入れも行き届いている様子。

山に木を植え育てるというのは、大変なことだろうと思う。
植林、下草刈り、枝打ちと、手を掛け育て、それでも自分の代で終わる仕事ではない。


五番関への道に入る ガクウツギが斜面のそこかしこに・・・

今、山仕事に従事している人はどれくらいいるのだろう。その平均年齢は決して低くないと思う。
この山を守り、次の世代へ引き継いでいく人はいるのだろうか・・・などと、道々考えながら歩く。


山見の名前が書かれた村有林の木
こうして、山は守り育てられていく・・・
傾斜のきつい所は自然林

ガレのトラバース 大所山から大峰主稜線へと続く尾根をバックに、ミズキの白い花も満開だった・・・


途中の水場 水場から振り返る

自然林と植林帯とが順番に入れ替わる。
斜面を見下ろすと、薄暗い林のそこかしこにガクウツギの白い花がぼんやりと浮かび上がっている。

急斜面のガレのトラバースがあるかと思えば、少し先は見事な杉檜の林の中を行く。
小さな上り下りを繰り返しながら、五番関へと高度を上げていく。

手入れの行き届いた杉林 歴史を刻んできた道・・・か


二つ目の水場の手前、ガクウツギの道 (振り返ったところ)
この少し先に二つ目の水場あり


左の木の間から、大所山らしい山頂が見えてくると、五番関はすぐだった。
トンネル東口への降路を見送り、ヒメレンゲの咲く岩の横を進むと、向こうが五番関だった。

大所山・・・だと思うのですが・・ ヒメレンゲ 五番関に戻る
トンネル西口
時折通り過ぎる車以外、人気はなかった


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