ルネのきままなアトリエ
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白馬岳:2932m 唐松岳:2696m
2006年8月7日(月) 猿倉〜大雪渓〜白馬岳〜白馬山荘(泊)
8日(火) 杓子岳〜白馬鑓ヶ岳〜不帰ノ嶮〜唐松岳(泊)
9日(水) 八方尾根下山
大雪渓を登る
北ア、白馬岳から唐松岳まで歩いた。
数年ぶりの小屋泊まり2泊3日の山行。
斜面を覆いつくす一面の花畑。次から次へと湧いてくるガスに見え隠れする垂直にも思える不帰ノ嶮(かえらずのけん)の岩場。
久しぶりに縦走の醍醐味を味わった山旅だった。
昨年は夏山目前に、相方が運動中肉離れを起こし、小屋泊まり山行を断念。
今年はその二の舞にならないよう、相方には出来る限り
運動は避け
、かつ、山歩きに必要な
筋力
と
体力
をつけてくれと、無理な注文をしておいた。
勿論、私も
「筋力・体力増強計画」
を立て、プロティンを飲みながら、日々トレーニングに勤しんだ。(・・・と、一応書いておこう・・・汗)
ま、とりあえず、一週間前の白山では、心配していた膝もすこぶる快調。
この調子なら人並みに歩けるかも・・・とは思うのだけれど・・・。
目指すは、多少ミーハーかもしれないけれど、白馬岳に。数十年ぶりの白馬岳だ。
ついでに・・・と言っちゃ何だけど、白馬三山から不帰ノ嶮を通り唐松岳まで行ってしまえ!
・・・と言っても、あくまでも体調と相談してのこと。無理は禁物。
とりあえず7月初めに白馬山荘の個室を予約した。2畳半の広さで個室料8500円なり。
―1日目―
8月7日(月)
晴れ時々曇り夕方雷雨
コース
広域地図
コース地図
5:30
猿倉
6:22〜6:45
白馬尻(村営小屋)
6:58〜7:05
大雪渓下
8:46〜9:00
大雪渓上
9:43
小雪渓
10:40〜11:03
花畑避難小屋上の水場
11:54
村営白馬岳頂上山荘
12:23
白馬山荘
前夜、8時自宅出発。出来るだけ早く猿倉に着き、たとえ一時間でも仮眠したい。とは言うものの、やはり白馬は遠い。
翌朝2時、猿倉着。
50台ほど停められるという駐車場は、半分ぐらいが埋まっていた。
とりあえず仮眠。
時折、後から到着した車のエンジン音とライトが闇の中に光る。
夜が白々と明け始める。スカッとした好天、というわけでもなさそう。空気がどんより淀んでいる感じ。
駐車場の向こうに荒々しい岩肌の山が聳えている。小蓮華山・・・かな?
5時過ぎ、用意を整え出発。
5分ほど車道を登ると、猿倉荘に着いた。
登山届を出し、トイレと朝ごはん。
5時半出発。
5分も歩かないうちに、鑓温泉への道を左に見送る。側に登山の注意を呼びかける立看板があった。7月22日の早朝、大雪渓上部で土砂崩落があったとのこと。山岳救助隊員の指示に従って気をつけて通行せよとのこと。
事前にネットの情報で知っていたけれど、やはり気が引き締まる。
昨年の大雪渓上部の崩落に続き、今年も。
猿倉駐車場の向こうに小蓮華山
猿倉荘
白馬鑓温泉への分岐
鑓温泉への分岐を過ぎてしばらく行くと、前方にピンク色に染まった白馬岳から小蓮華山への稜線が見えてきた。どうやら今日の天気はまずまずの様子。
今日はあそこまで登ると思うと、何だか身震いする。歩きとおせるだろうか・・・。
山を見上げながら緩やかな勾配の林道歩きが続く。
林道から山道に入ると、白馬尻はまもなく。
朝日に染まる白馬岳(左)と小蓮華山(右)
林道から山道に入る
白馬尻の手前で、サンカヨウが朝の光を浴びて出迎えてくれた。
猿倉から50分ほどで白馬尻着。
下の村営の小屋の前には4,5人登山者が休憩していた。
今回は出来るだけ荷物の軽量化を図った・・・はずなのに、ザックが重い。少しでも減らそうとパンとおにぎりを食べる。
横の斜面に目をやると、キヌガサソウが優雅に咲いている。近くに、シラネアオイも一輪見える。写真を撮りたいけれど、ロープの中で、近づけない。辺りを見回すが、他にシラネアオイの姿を見つけられなかった。
大雪渓左岸には大群落があるはずだけど、立ち入ることは出来ない。
朝日を浴びて・・・サンカヨウ
向こうに見えるのは村営の小屋
村営白馬尻小屋
白馬尻の二つの小屋は、どうやらシーズン中だけ設営するプレハブの建物の様子。
冬の積雪や雪崩にも耐えられる建物となると、相当丈夫なものが必要なんだろうか?上の小屋の方が、若干大きめ?
上の小屋
小屋の横より大雪渓を見上げる
大雪渓へは、更に10分余り潅木帯を登る。
途中、キヌガサソウの群落。先日の白山でもたくさん見かけたけれど、こんな優雅な大輪の花が、過酷な自然の中で開花するというのは不思議な気がする。
さて、いよいよアイゼンを着け、大雪渓の登りに取り掛かる。
見上げると、雪渓の中央辺りをちらほら人が登っていくのが見える。
栂池の展望湿原から見下ろすと、大雪渓は白馬岳に向かって垂直に立ち上がっているように見えるけれど、ここから見上げるとそれほどの勾配でもないみたい。
栂池展望湿原よりの大雪渓(今年5月)
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キヌガサソウの見事な花
アイゼンを着け準備
雪の上の紅ガラはほとんど消えかかっていたけれど、雪渓中央付近のトレースを忠実に辿る。所々アイスバーンになっている所もあるけれど、快調に高度を稼いでいく。
途中、停滞している何組かのパーティを追い越す。
自分のペースで歩いているけれど、今日はなぜか調子がいい。相方などは、いつものことではあるけれど、こちらを振り向くこともなくどんどん上っていく。
傍目には二人連れには見えないだろう。
大雪渓を登る
途中傾斜の緩やかな所には、大小の落石が転がっている。
中には3,4メートルはありそうな大きさのものまである。
見上げると、何と!!、その大岩に5,6人の人が寄りかかったり座ったりして休憩している。
どうか、私がそこまで辿り着くまで、その岩が動き出しませんように・・・。
ひたすら念じながら、スピードを上げる。
見下ろす
雪渓上の岩。比較的緩やかな斜面にとどまっているとはいうものの、下は硬い雪。
ちょっとした刺激でいつ転がりだしてもおかしくはない・・・と思うのだけれど・・・。
石の上に座って休憩している人の無邪気な(!)顔を見ると、喉元まで出かかった「危ないですよ」の言葉が引っ込んでしまった。
石と一緒に転がり落ちても知らんからね〜
でも、下から上がってくる人を巻き添えにしないでくださいね!
左岸の雪渓
けれど、丁度腰を下ろすのに良さそうな岩の上にちょこんと座って休憩している一人のオバサンを見るにいたっては我慢できなくなって、おずおずと声を掛けてしまった。
あの〜、石の上に座るのは危険だと思うんですけど・・・
「あら〜、そうだわね〜、下は氷だもんね〜ははは・・・」
(危機感なし・・・とほほ・・・言わなけりゃ良かった・・・(×_×;)
で、も一つ、付け加えておいた。
数日前、針ノ木(大雪渓)で、死んでましたよ〜。座った岩が動いて・・・
これは本当のこと。7月末、ツアー登山中の一人が亡くなり、一人が重傷を負ったらしい。
ただし、動いた岩が雪渓上だったかどうかまでは知りませんけどね・・・。
これをお読みのよい子の皆さん、大雪渓では間違っても石の上に腰を下ろすなんてことはしないでくださいね。
そして、下からよちよちふらふら登ってくる小心者のオバサンを、はらはらドキドキさせるようなことは避けていただきたいものだと思います。
途中二度ほど足を休めながら、1時間40分ほどで、大雪渓の上に出た。
例年なら雪渓上をもっと上まで詰めるけれど、7月22日の崩落で手前で左岸の斜面から回り込んで雪渓上部に出る。
上空、雲が広がってきた
雪渓上端・・アイゼンをはずし、休憩する
崩落に伴って新しく付けられた道は、まだ岩が固まっておらず、落石には十分注意する必要がある。
崩壊箇所もまだ危険性もあるようで、途中「すばやく通過してください」との看板もあったりする。
杓子岳手前の岩峰が覆いかぶさるように聳える
新しく付けられた道
大雪渓の上部、葱平(ねぶかっぴら)は色とりどりの花々が咲き乱れていた。
最初、せっせと写真を撮っていたけれど、この調子では3日間メモリーもバッテリーも持ちそうにないと気がついた。
それに、カメラにお任せでシャッターを押すだけしか能がないもので、たいした写真は撮れない。
上空の青空に、白い雲が広がりだした。
大雪渓の下からはガスが次から次へと湧いてきて、下の方は霞んで見えなくなってしまった。
時折通り過ぎていくガスが、陽射しを遮ってくれる。
これぐらいのお天気が上りには丁度いい。
余りにもピーカンだと、長時間の登りはかなりきついだろう。
出来れば、こんなお天気が明日も続いてくれるといいのだけれど・・・。
どんどん湧き上がる雲(ガス)
巍々たる岩峰が迫ってくる
(小雪渓手前にて杓子岳方面を見上げる)
小雪渓はトラバースしながら登る。時間にして、ほんの5分ほど。
しっかりした足場を切ってあるので、アイゼンなしで上る人も多いけれど、足も疲れてきているので、念のためアイゼンを着ける。
小雪渓を見上げる
小雪渓のトラバース
小雪渓を抜けるとまたしてもお花畑の斜面が広がる。
すぐ上に木製の立派な避難小屋があり、更に、しばらく上ったところに雪渓の下の水場がある。
休み休み上ってはいるけれど、かなり足も疲れてきた。お腹も空いてきた。
お花畑を見ながら大休止。
おにぎり、パン、ソーセージ、チーズ。とにかく、少しでも荷物を減らそうとお腹に入れる。
(荷物+体重の総重量には変化ない?(^▽^;)>゛)
見上げると、村営の頂上宿舎が見えている。
もう一頑張り・・・って、これが意外に長かったのだけれど・・・。
お花畑の避難小屋
避難小屋上で大休止
村営頂上宿舎が見える
ミヤマキンポウゲ
しばらく上ると、左手に巨大な赤い岩がある。
ガイドブックによると、岩肌についた搾痕は氷河の名残といわれるらしい。どれがその搾痕なのか、ちょっと分からなかったけれど、その大きさと斜面を覆い尽くすミヤマキンポウゲやシナノキンバイが見事だった。
さながら黄色い絨毯を敷き詰めたよう・・・
この後も次から次へと、覚えきれないくらいたくさんの高山植物が目を楽しませてくれた。
もとより花の知識が乏しいのと、カメラのメモリー不足を警戒して撮影を控えた。
花を楽しみたい方は、ガイドブックや紹介のサイトをご覧になるか、ご自分で現地に行ってくださいね。(汗)
イブキジャコウソウ
葉の裏をこすると良い匂いがするらしい
水場の休憩から小休止を入れ、50分近くかかってやっとっ村営白馬岳頂上宿舎に辿り着く。
白馬山荘までは更に20分ほど上る。
山行の計画を立てた時、どちらに泊まるか迷った。
村営には昔泊まったことがあり、今回は白馬山荘に。但し、村営の方は個室6畳の広さで4000円と割安だ。食事もバイキングらしい。
村営白馬山頂頂上宿舎
旭岳がどっしりと・・・
白:タカネツメクサ
紫:タカネシオガマ
村営白馬岳頂上宿舎から、 稜線に出ると、目の前にど〜んと、大きな山が横たわっていた。旭岳(2987m)だ。山の斜面にまだたくさんの雪が残っている。
白馬山荘までは、高山植物が保護された道を色とりどりの花を楽しみながら歩く。
土の流出を防止するためか土の斜面にネットがところどころ覆ってある。
宿舎の近くでは珍しいウルップソウも咲いていたが、明日朝日の中で写そうと思い、結局写真を撮り損ねてしまった。
・・・ま、いい。どうせ、たいした写真は撮れないんだから・・・。
12時半、猿倉より7時間で白馬山荘到着。
休憩を入れてこの時間だから、かなり優秀だと思う。人並み、ぐらいにはレベルUPしたかもしれない。
1200人収容できる白馬山荘。白馬岳の山頂直下に要塞のように建っている。
売店や、3000メートル近い稜線上とは思えない瀟洒な造りのレストランスカイプラザ白馬、宿泊棟が建ち並んでいる。
まだ時間が早いせいか、山荘前も館内も人影はまばらだった。
受付を済ませ、部屋に荷物を運ぶ。二畳の畳と、荷物が置ける半畳大の板の間が付いた個室。
荷物を置いて、山頂へ。
山頂付近より白馬山荘を見下ろす・・・さながら要塞のよう
白馬岳(2932m)
白馬岳山頂・・・信州側はすっぱりと切れ落ちている
白馬岳山頂は、20人ぐらいの人で賑わっていた。
信州側はスパッと切れ落ちた断崖絶壁。湧き上がる真っ白なガスで、下は見えない。時折ガスの切れ目から、荒々しい垂直の岩場が顔をのぞかせる。
やった〜!
再び大雪渓を登る日がやってこようとは、夢にも思わなかった。
せいぜい栂池辺りから眺めるのが精一杯、と諦めていたのに・・・。
心の底から湧き上がる爽快感!
山頂でのひと時、記念撮影とスケッチに精を出したりする。
うわ〜い!やったね!
ところで、山頂で
「どこかでお目にかかりましたね」
と声をかけてこられた男性がいた。
えっ?・・・と言ったものの、こんなところで知り合いなんているわけないし・・・人間違いだろう・・・と、返事もしなかった。
後から思うと、とんでもなく失礼なことをしてしまったものだ。
もしかして、どこかでお目にかかった方で、もしかしてこれをお読みの方でしたら、失礼いたしましたm(_ _)m・・・って、そんなわけないよね〜(^〜^;)
こんな岩場にも、すがりつくように健気に咲く花
チシマギキョウ
山頂付近より大雪渓を見下ろす・・・右上左:杓子岳 右:白馬鑓ヶ岳
山荘に戻り、レストランスカイプラザ白馬にてコーヒータイムにする。
今回の山行は軽量化を図るというものの、財布のこれ以上の軽量化を避けるため、昼食とコーヒーなどの嗜好品は持参した。
が、瀟洒な室内と、生ビール片手に談笑する人たちを目の当たりにすると、小屋の外でコンロを沸かして自分でコーヒーを入れるなんて気持ちは吹っ飛んでしまった。
オマケに、山の上でケーキ!!・・・と〜っても美味しかった!!
スカイプラザ白馬
館内のランプ
ケーキとコーヒーで一息
部屋に戻った直後、雷鳴と共に大粒の雨が降ってきた。2時間近くも続いただろうか。雨の中も、ずぶ濡れになりながら続々と登山者が到着している様子。
夕食までのひと時、部屋で一眠りする。・・・が、これが悪かった。
頭痛がすると言っていた相方、昼寝から目覚めたら症状が悪化していた。
だいたい今まで、標高2000〜2500mを境ぐらいに頭痛を起こしていた相方。分かっていても、高山病の症状だと認めたくなかった。
昼寝をして心臓の働きが弱まったことで、一層血液中の酸素量が低下したみたい。
3000mを越えても全く平気な私には、そのしんどさは理解しようもない。
夕食後、白馬山荘内の昭和大学医学部の診療所で診てもらった。
現役の学生がいくつかのチームに分かれて夏中待機してくれている。無料。但し、カンパを受け付けている。
入れ代わり立ち代り、初々しい学生さんたちの問診を受け、小一時間を経過した頃には体調は不思議なくらい回復していた。
ちなみに、指を挟むだけで血液中の酸素量が分かるという器具があり、86の数値だった。
夕暮れ・・・白馬山荘前から
左:杓子岳 その横:白馬鑓ヶ岳 中央:丸山 右:旭岳
小屋の受付横にお天気相談所があり、元気象庁予報官の方が、詰めている。
明日朝7時の予想天気図を見ると・・・えっ!!台風7号が紀伊半島沖に接近中。
い、いつの間にそんなとこにそんなものが・・・・( ̄□ ̄;)!!
予報では、曇りか霧、時々雨。
聞くと、明後日も晴天は望めないだろうとおっしゃる。
小屋の前にて
雷雨も収まり、ところどころ水色の夕空が覗きはじめた。
雲海を真っ赤に染めて夕日が沈む・・・というのは見ることが出来なかったが、西の空、旭岳の上の雲がピンクに変わり、一筋の飛行機雲がオレンジ色に輝き、陽は沈んでいった。
ピンクに染まる西の空・・・小屋の前より
さてさて、明日はどうするか。
相方の体調と天候次第では、このまま下山も止む無し。
ま、それも仕方ないか・・・。数十年ぶりに白馬に登られただけでも十分幸せだ。
それでも・・・・。
相方の体調の回復と好天を願いつつ、白馬岳の夜は更けていった。
●2日目に行く●
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